メルカトルかく語りき 麻耶雄嵩
死人を起こす
一年前、高3のぼくは友人と奇妙な意匠をした「カレー荘」を訪れ、事故で友人を失った。
現在、ぼくらは真相究明のため、再び山荘を訪れた。友人の一人が、名探偵をカレー荘に呼んだと言うのだが、探偵が着く前に新たな事件が発生する。
九州旅行
美袋のパソコンを駄目にしたメルカトルは、引き換えに次の作品のアイディアを提供するという。はたして、メルカトルは美袋のマンションの一室で刺殺体を発見、二人は犯人を推理することになる。
収束
新興宗教に嵌った依頼人の娘を取り戻すため、メルカトルと美袋は孤島に向かう。嵐の夜が過ぎ、宗主が銃殺体で見つかってしまう。探偵は、事件は次の夜に「収束する」という。
答えのない絵本
メフィスト学園の物理教師が理科準備室で殺害された。容疑者の一年生20名から、メルカトルは絞り込みを始める。
密室荘
信州にあるメルカトルの別荘で身元不明の死体が発見された。状況から、犯人はメルカトル、美袋のどちらかであることは間違いないのだが。。
テーマは「フーダニット」。本書では、犯人は「誰でもいい」「いない」「三人のうちの誰かだが、特定できない」など一筋縄でいかない事件が続く。犯人は確実に存在するが、推理で特定できないため、どう折り合いをつけるか?メルカトルのぶん投げ推理が面白い。
トヨタ式改善力 「原価2分の1」戦略への疾走 若松義人/近藤哲夫
概略
いわゆる「トヨタ式」を、特に改善する力中心にまとめた書籍。
原価とは物を作るコストである。
原価の条件として、「顧客が望む品質とタイミングで供給責任を果たし、かつコストで勝利できる」ことが挙げられる。
日本は世界的に見ても原価高でありコストで他国に勝利できているとはいえない。「カイゼン」で原価を下げていく必要がある。
2分の1を目標に掲げるのは、コストを半減するには重箱の隅をつつくのではなく、どうしても問題を根本から考えざるを得ないため。
感想
上司に勧められて手を付けたトヨタ式。
この本では製造だけでなく間接部門の改善についてもページが割かれており、その章は参考になった。
・優秀な者から移動させてなんとか回させる
・星取り表を作って実力を把握
・顧客のためになるか?を基準に業務整理
など。
全体として体験談に終始し、施策の検証、データが不足している。引き続き他の本を当たる必要がある。
11枚のとらんぷ 泡坂妻夫
1部 11の奇術
アマチュア奇術クラブによるトラブル続きのマジックショウ。フィナーレを迎えるその時、登場するはずの女性マジシャンが「消失」し、自宅で死体となり発見される。彼女の周りには叩き壊されたマジックの小道具が並べられていた。
2部 11枚のとらんぷ
11人のマジシャンのあまり実用的でないカードマジックについて、作者の実体験を元に紹介。
3部 11番目のトリック
国際奇術家会議に集う奇術クラブの面々。最終日、慌しい1日を過ごす一同の中で、事件の真相に辿り着く者がいた。
作中作の「11枚のとらんぷ」は一見独立した奇術小説だが、読者にとっては探偵役を誤認させるミスリードであり、探偵にとっては犯人当ての根拠になっているのが面白いところ。
解決パートに入る際は、これで解けるのかという困惑もあったが、消去法による犯人の指名には、言い逃れを許さない迫力があった。
大逆転裁判2 成歩堂龍ノ介の覺悟
第1話:弁護少女の覚醒と冒險
浜辺に建つ小屋の中で英国淑女が殺害された。死体発見時、小屋には被害者と被告人の2人のみしかおらず、それを複数の証人が目撃していた。絶体絶命の被告人を救うため、成歩堂龍太郎が大審院の法廷に立つ。
第2話:吾輩と霧の夜の回想
ビリジアン・グリーン刺傷事件の裁判結審から一夜明け、またしても夏目漱石は逮捕されてしまう。容疑は同下宿に住むウイリアム・ペテンシーの殺害未遂。事件は、下宿に噂される「呪い」と何か関係があるのか?
第3話:未来科学と亡霊の帰還
倫敦万国博覧会で行われた科学実験は失敗に終わり、紳士が命を落としてしまう。逮捕された科学者は、自分の開発した装置の機密保持を訴え龍之介に弁護を依頼する。一方、同日万博会場の蝋人形館では、ある蝋人形が誘拐されていた。
第4話:ねじれた男と最後の挨拶
刑事トバイアス・グレグソンの死体が寂れたアパートメントで発見される。容疑者として検事バンジークスが逮捕され、裁判は完全非公開陪審員不在の極秘裁判で行われることになる。アパートに残る痕跡から、事件は「死神」の手によるものと考えられた。
第5話:成歩堂龍ノ介の覺悟
極秘裁判は続く。「プロフェッサー事件」の真相、全てを陰で操る「死神」の正体は明らかになるのか?
数々の伏線が明らかにされたが一番は「ワトソン」の正体。最後に共同推理ができタップダンスを楽しむことができた。
黒幕は納得できるものだが意外性はなく後半失速したのが少し残念。ただ自分がこういうゲームを純粋に楽しめない年になったというのもあるが
大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險-
第1話:大いなる旅立ちの冒險
西洋レストランで起きた殺人事件の容疑者、成歩堂龍之介。絶体絶命の中、親友であり弁護士の亜双義の力を借りながら、成歩堂は真犯人の正体を解明する。
第2話:友とまだらの紐の冒險
亜双義の留学に同行する形で成歩堂は大英帝国に向かう蒸気船の中に忍び込んだが、亜双義は室内で不審死を遂げてしまう。成歩堂は、船内で出会った「名探偵」シャーロックホームズの力を借りながら真実を明らかにする。
第3話:疾走する密室の冒險
大英帝国に着いた成歩堂は、弁護士として認められるため、ある高利貸しの弁護を担当することになる。冬の馬車で起きた殺人事件は、意外な形で幕を下ろすことになる。
第4話:吾輩と霧の夜の冒險
成歩堂に新たな事件の依頼が下される。被告人は、倫敦に留学している夏目漱石。路上で女性が刺されたという事件だが、漱石本人も現場には自分と被害者の二人しかいなかったと証言していた。
第5話:語られない物語の冒險
ホームズと顔馴染みの質屋が真夜中に銃殺された。単なるスリの逆上に見えたこの事件は、英国を悩ませる外交情報の漏洩問題と繋がりがあった。
良くも悪くも続編を前提としたストーリー。
話を広げすぎて解明できていなあ伏線がいくつかあるが、個人的にはこれくらいスケールが大きい方が好み。
BGM(特に尋問)や共同推理の演出も凝っていて楽しめた。2を早くプレイしたい。
愚行録
エリートサラリーマン家庭であった田向一家惨殺事件から1年。事件は犯人が見つからないまま迷宮入りしていた。
そんな中、ある記者が田向夫妻の関係者に、夫妻との思い出や人柄についてインタビューして回る。すると、一見理想的な夫婦と思われた二人の本性が現れてくる。
『愚行録』は、貫井徳郎のミステリー小説。2006年3月22日に東京創元社より刊行され、第135回直木賞の候補となった。その後、2017年に映画化された。
関係者は田向夫妻について語る中で、田向夫妻だけでなく自分の人間性までも暴露してしまっている。喋る中である事実に気づいてしまった結果、レポーターに口を封じられてしまった関係者もいる。
何かを批評する際は、同時に批評者自身も批評の対象になってしまうことを心に留めておきたい。